追越しと車線のルール — 禁止場所・標識の違い・進路変更
最終更新: 2026年7月30日
追越しは原則として前車の右側を通行します(道路交通法 第二十八条)。左側を通るのは 2 つの場合だけ——前の車が右折のため道路の中央に寄っているときと、路面電車を追い越すときです。追越しが禁止されるのは、標識のある場所、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近とこう配の急な下り坂、トンネル(車両通行帯がある場合を除く)、交差点とその手前から 30 メートル以内(優先道路を通行している場合を除く)、踏切・横断歩道・自転車横断帯とその手前から 30 メートル以内。「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識が禁じているのははみ出すことだけで、追越しそのものを禁止するのは別の標識です。また、黄の線を越えて進路を変更することはできません。
「追越し」とはどういう行為?
追越しには 3 つの要素からなる法律上の定義があります。前の車に追いつき、進路を変え、その側方を通過して前に出る。 道路交通法 第二条二十一号です(定義)。真ん中の「進路を変え」が、これを単なる説明ではなく定義にしています。
進路を変えずに前の車の横を通り過ぎる場合(隣の通行帯をそのまま走り続けたときなど)は、追越しではなく追い抜きです。この区別は何問かの正誤を決めます。ルールによって、追越しだけを禁じるものと、追越しと追い抜きの両方を禁じるものがあるからです。横断歩道・自転車横断帯とその手前 30 メートル以内は両方が禁止で(追越しも追い抜きも禁止)、距離は 50 メートルではなく 30 メートルです。用語そのものは用語集の「追越し」にも 1 語 1 ページで置いています。
右側から? 左側から?
原則は右側です。 第二十八条第一項は、他の車を追い越そうとするときは追い越されようとする車の右側を通行しなければならないと定めています(右側を通行)。日本は左側通行なので、追い越す側は右。したがって「原則として左側を通らなければならない」は誤り、「右側が混んでいたので左側から追い越した」も誤りです。
逆になる場合が 2 つあります。前の車が右折のため道路の中央(一方通行の道路では右端)に寄って通行しているとき、そして路面電車を追い越すときは、その左側を通行します(左側を通る 2 つの場合)。路面電車は道路に敷かれた軌道を走るので、右側から追い越そうとすれば反対方向の車線に入ってしまいます。だから「路面電車は原則としてその右側を通る」は誤り。追越し中は安全な間隔を保ち、対向車と後方の車だけでなく前の車のさらに前方の交通にも注意する必要があります。
追越しが禁止されている場所
6 つあり、数字が効いてきます。 教則はまとめて挙げています。標識により追越しが禁止されている場所、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近やこう配の急な下り坂、トンネル(車両通行帯がある場合を除く)、交差点とその手前から 30 メートル以内(優先道路を通行している場合を除く)、踏切・横断歩道・自転車横断帯とその手前から 30 メートル以内(一覧)。
学科は 1 語だけ変えて出してきます。曲がり角やカーブは、対向車が来ていなくても禁止です(それでも禁止)。判断基準は見通しではなく場所です。こう配の急な下り坂も頂上付近と同じく禁止なので、「頂上付近は禁止だが急な下り坂は追い越してよい」は誤り。トンネルは車両通行帯がある場合が例外なので、「常に禁止」は誤り。交差点は 30 メートルで優先道路の例外つき(30 メートル・優先道路は除く)、踏切等も 30 メートルで、10 メートルという決まりはありません。別枠として、追越しをしている車をさらに追い越す「二重追越し」は禁止、交差点や踏切で停止・徐行している車の前に割り込むことも禁止です。
2 種類の「追越し」標識の違い
別の標識で、禁止の範囲が違います。この取り違えがこの分野で最も多い誤りです。 「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」(標識令 三一四)が禁じているのは、追越しのために道路の右側部分にはみ出すことだけです(禁じている内容)。右側部分にはみ出さない追越しはできます。ですから「はみ出さない追越しまで禁止している」は誤り。追越しそのものを禁止するのは別の標識——同じ図柄の下に「追越し禁止」の補助標識が付いたもの——で、こちらは追越し自体を禁止します。図柄は同じ、補助標識が 1 枚増えるだけで禁止の範囲が大きく変わるので、答える前に補助標識を確認してください。
そもそもなぜ「はみ出し禁止」という標識が必要なのか。標識がなければ、はみ出しての追越しができる場合があるからです。第十七条第五項第四号は、道路の左側部分の幅が 6 メートル未満で見通しのよい道路において、他の車を追い越そうとするときは右側部分にはみ出せるとしています。しきい値は 6 メートルで、8 メートルではありません。標識はこの許容を打ち消すためにあります(6 メートルのルール)。同じ区別は路面に描かれた標示版にも当てはまります(標示でも全面禁止ではない)。
どの車両通行帯を走る? 黄の線・またがり通行
原則は道路の左側端から数えて 1 番目の車両通行帯です(第二十条・左から 1 番目)。2 番目ではありません。同一方向に2 つあるときは左側の通行帯、3 つ以上あるときは最も右側を追越しのために空けて、それ以外を通行します(最も右側は空ける)。車両通行帯のない道路では、追越しなどやむを得ない場合のほかは道路の左に寄って通行します(左に寄る)。
通行帯のある道路で追越しをするときは、いま通行している通行帯のすぐ右側の通行帯を使います。2 つ右でも、左でもありません(直近の右側)。追い越し終わったら、速やかに最も右側以外の通行帯に戻らなければなりません(速やかに戻る)。最も右側を走り続けると速度超過や車間距離の詰まりにつながるため、努力目標ではなく義務として書かれています。
標示の決まりが 3 つ残っています。黄の線を越えて進路を変更することはできません(黄は越えられない)。「進路変更禁止」の標示は片側の通行帯だけを対象にする場合があるので、線がどちら側にあるかを読みます。2 つの通行帯にまたがって通行したり通行帯からはみ出したりしてはならず(またがり通行は不可)、理由なく何度も進路を変えることも認められません。最後に、自分より最高速度が高い車に追いつかれたとき。その車が追越しを終わるまで速度を上げてはいけません(速度を上げない)。車両通行帯のない道路で、中央との間に通る余地がないときは、できる限り左側端に寄って進路を譲ります(左側端に寄る)。この義務は車両通行帯のある道路には及びません。後続車は別の通行帯を使えるからです。
左折・右折はどこに寄せる?
寄せます。とくに左折は条文が具体的です。 第三十四条第一項は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつできる限りその左側端に沿って徐行しなければならないと定めています(左折の方法)。「あらかじめ寄る」と「左側端に沿って徐行する」の両方が必要です。中央に寄って交差点の内側を回るのはまったく別の形になります。
右折は鏡像に 1 つひねりが加わります。あらかじめできる限り道路の中央に寄り、交差点の中心のすぐ内側を徐行して通行します。「すぐ内側」で、外側ではありません。一方通行の道路では対向車のために空ける必要がないので、中央ではなく右端に寄ります。
一般原動機付自転車(原付)は別扱いです。信号機などで交通整理が行われている交差点で、車両通行帯が3 つ以上ある道路(2 つ以上ではありません)、または「一般原動機付自転車の右折方法(二段階)」の標識がある交差点(標識)では、二段階右折をしなければなりません。あらかじめできるだけ道路の左端に寄り、交差点の手前の側端から30 メートルの地点で右折の合図を出し(30 メートル・50 ではない)、青信号で徐行しながら交差点の向こう側まで直進し、そこで止まって右に向きを変え、前方の信号が青になってから進みます。このとき青の矢印の信号では右折できません(矢印では進めない)。手順そのものは用語集の「二段階右折」にもまとめています。
軌道敷内はいつ通行できる?
縦に走ることはほぼできません。横切るだけです。 第二十一条第一項は、左折・右折・横断・転回のため軌道敷を横切る場合と、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、軌道敷内を通行してはならないと定めています(原則禁止、横切るのはよい)。
例外はほかにもあり、目に見えるのは標識です。「軌道敷内通行可」(標識令 四〇二)があれば、自動車は軌道敷内を通行できます(標識)。ただし駐車してよいという意味ではありません。標識があっても義務が 2 つ残ります。路面電車の通行を妨げてはならないこと(妨げてはいけない)、そして後方から路面電車が接近してきたときは、すみやかに軌道敷外に出るか必要な距離を保つこと(すみやかに出る)。その場で一時停止するのではありません。
路面電車に別のルールが用意されている理由もあります。第二条八号の「車両」とは自動車・原動機付自転車・軽車両・トロリーバスのことで、路面電車は「車両」に含まれません(含まれない)。路面電車と車が混ざった設問では、その文がどちらの語を使っているかを確認してください。
よくある質問
- 「追越し禁止」の標識と「はみ出し通行禁止」の標識はどう違いますか?
- 「追越し禁止」の標識は追越しそのものを禁止します。よく似た「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識が禁止しているのは、追越しのために道路の右側部分にはみ出すことだけで、はみ出さない追越しはできます。
- カーブで追い越してよい場合はありますか?
- ありません。道路の曲がり角付近やカーブは追越しが禁止されている場所で、対向車が来ていなくても禁止です。上り坂の頂上付近やこう配の急な下り坂も同じです。
- 追い越したいとき、正しい手順は?
- 追越し禁止の場所でないことを確かめ、前方の安全とバックミラーなどで右側・右斜め後方の安全を確かめます(右側部分にはみ出すときは反対方向の安全も必ず確かめます)。右の方向指示器を出し、約 3 秒後に最高速度の制限内で加速しながら進路を緩やかに右にとり、前の車の右側を安全な間隔を保って通過します。左の方向指示器を出し、追い越した車がルームミラーに映るくらいの距離まで進んでから進路を緩やかに左にとり、合図をやめます。
- 黄の線を越えて進路を変更できますか?
- できません。車両通行帯が黄の線で区画されている場合、その線を越えて進路を変更してはいけません。「進路変更禁止」の標示は片側の通行帯だけを対象とする場合もあるので、線がどちら側にあるかを確認してください。
- 曲がるときは手前の車線に寄る必要がありますか?
- 左折はそのとおりで、あらかじめできる限り道路の左側端に寄り、その左側端に沿って徐行します。右折はあらかじめできる限り道路の中央に寄り、交差点の中心のすぐ内側を徐行して通行します。一方通行の道路では中央ではなく右端に寄ります。
- 軌道敷内はいつ通行できますか?
- 左折・右折・横断・転回のために横切る場合、危険防止のためやむを得ない場合、そして「軌道敷内通行可」の標識がある場合です。標識があっても路面電車の通行を妨げてはならず、後方から路面電車が近づいたときはすみやかに軌道敷の外に出るか必要な距離を保ちます。
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関連用語
出典
- e-Gov — 道路交通法 第二条二十一号・第二十八条(追越し)、第十七条第五項第四号(はみ出し・6 メートル)、第二十条(車両通行帯)、第二十一条(軌道敷内の通行)、第二十七条(追いつかれた車両の義務)、第三十四条(左折又は右折) (一次ソース)
- e-Gov — 道路交通法施行令 第九条(三以上の車両通行帯が設けられている場合の通行方法) (一次ソース)
- e-Gov — 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第一:追越しのための右側部分はみ出し通行禁止(三一四)、軌道敷内通行可(四〇二)、一般原動機付自転車の右折方法(二段階)(三二七の八) (一次ソース)
- 交通の方法に関する教則 第5章第2節・第5節・第6節 — 通行するところ・進路変更・追越し禁止場所と運転手順/第8章第3節 — 二段階右折 (一次ソース)
更新履歴
- 2026年7月30日 — 初版公開。